追風用意

追風用意

今日の読書
徒然草 四十四段

全文引用するのは少々長いので、心に残った文章を。

御堂のかたに法師ども参りたり。夜寒の風にさそはれくるそらだきものの匂ひも身に沁む心地す。寝殿より御堂の廊に通ふ女房の追風用意など、人目なき山里ともいはず、心づかひしたり。

徒然草 兼好法師


御邸内の佛堂と思はれる所には僧達が多く参って居るようであった。薄ら寒い夜の風に誘はれて来る薫物(たきもの)の匂ひも身に沁むやうに思はれるのであった。正殿(せいでん)から御堂への繋ぎ御殿の縁を通って行く侍女達の衣装から散って来る匂ひにも、その姿態(すがた)にも、見る人のない淋しい所では無いような十分の用意があるのである。

新訳徒然草 与謝野晶子

 

原文にある「追風用意」の意味

通った跡によい香りの漂うように、衣服に香をたきしめておくこと。(広辞苑)

 


秋の夜の月明かりと虫の音と、庭の小流れののどかな音の中
しめやかに執り行われる御仏事の様子が目に浮かぶ。

自然の恩恵に十分な人の配慮が重って美しい一場面が完成する。

機嫌よくいきましょ
藤井あき乃