おとなの春の夜

おとなの春の夜

昨晩から降っていた雨があがった。
雨と一緒に冷たい空気が戻ってきて、
早すぎる熱気にぼんやりしていたあたまが動き出してくれる。

 

やっと桜が咲き始めて嬉しい。
これから2週間くらいは、
毎日お天気を気にして桜の様子をうかがう日々に。

 

桜の様子にこころを奪われて仕方ないことを詠んだ歌もけっこうあって興味深いが、
徒然草にもこんなくだりがある。

 

鳥の声などもことの外に春めきて、のどやかなる日影に、垣根の草萌え出づるころより、やや春ふかく霞わたりて、花もやうやうけしきだつほどこそあれ、折しも雨風うちつづきて、心あわたたしく散り過ぎぬ、青葉になりゆくまで、よろづにただ心をのみぞ悩ます。

徒然草 第十九段 一部抜粋

 

どの鳥の聲も皆予想外に早く春らしくなって居て、ほかほかとした太陽の光線のもとに垣のまはりの草の青み出した頃から漸くすこしづつ春の盛りの靄や霞が下りて、櫻も咲きさうになつたと思ふ時分に、雨が降ったり荒い風の日が続いて咲いた花もとうとう散ってしまふ。梢が青葉になるまで櫻に対してする懊悩は一通りのもので無い。

新訳徒然草 与謝野晶子著

 

花二十日という言葉もある。
「蕾七日、咲いて七日、散って七日」

 

散ってしまった花びらにも思いを寄せ、
その情景にこころを揺らして言葉を紡ぐ。
完全に葉桜になってしまうまでは心を離すことがない。

 

「花疲れ」という季語を初めて知ったときには心底痺れた。

 

坐りたるまゝ帯とくや花疲れ

鈴木真砂女

 

ほんのり華やぎを伴う心地よい疲れと、
坐り込んだ場所(椅子だろうか畳だろうか)のひんやりとした冷たさと。
おとなの春の夜は静かに美しい。


今年の桜はどんな記憶を残してくれるだろう。

 


金曜日ですね。
今週はどんな一週間でしたか?

今日もここにきて下さって、
ほんとうに。。。ありがとうございます。

いろんな事が起こりますが、
どうぞそれぞれに。。。少しでも。。。
しあわせだと思える瞬間がありますように。
藤井あき乃