冬の夜の感傷
和漢朗詠集の「冬夜(とうや)」の部に置かれた紀貫之のうた。
思ひかね妹がりゆけば冬の夜の川風寒み千鳥鳴くなり
おもいかね いもがりゆけば ふゆのよの かわかぜさむみ ちどりなくなり
和漢朗詠集358
すぐさま千鳥の鳴き声を調べる。
インターネットってなんて便利なんだろう。
冬の海や川へ行って、千鳥が鳴いてくれる偶然をじっと待っていなくてもよい。
風情はないが実に有り難い。
千鳥もいろいろいるから貫之がその夜聴いた鳴き声と、
わたしがインターネットで聴いた鳴き声は違うだろうけれど、
息が白くなるような空気感とともに、しんとした暗い冬の夜道にひびく音まで聞こえてくる。
一応、訳文も記しておく。
(恋しい)思いに堪えきれず、あの人のもとへ訪ねて行く道すがら、
冬の夜の川風が寒いので千鳥が(せつなく)鳴いているのが聞こえる。
和漢朗詠集358
このうたは、貫之の歌を批判し続けた正岡子規が「此歌ばかりは趣味ある面白き歌に候」と賛美したそう。
なぜ正岡子規が批判し続けたのか、その理由を私は知らないし、
和歌に関する一般的な素養すら持ち合わせていないのだけど、
紀貫之のうたは情景がリアルに浮かぶことが多い。
堪えきれないほどの恋しさを抱えて、
冬の夜道を行く経験をしたこともないのに、
鮮明に想い浮かぶのはなぜだろう。
冬至に向かって。。。
寒さと暗闇に閉ざされる時間が長くなり、
少しだけ感傷に浸るのも悪くない。
今週はどんな一週間でしたか?
今日もここにきて下さって
ほんとうに。。。ありがとうございます。
どうぞそれぞれに。。。しあわせな週末でありますように。
温かくしてね。
藤井あき乃